栗駒山から流れ出る皆瀬川がゆるやかに蛇行しながら山間の里を潤す。ここは、秋田県内陸部の県南に位置する雄勝郡稲川町。雄大な自然に囲まれたこの町は、清澄な水と土壌に恵まれ、古くから農業や工芸品が栄えた。町は漆器店が軒を連ねる川連と、うどん店やうどん工場が立つ稲庭の二つの地区からなっている。この稲庭地区。ここが秋田県を代表する名産品稲庭うどんを生んだ里である。
澄んだ水と、厳選された材料を使って丹念に作り上げられる稲庭干饂飩。江戸時代からの技法をかたくなに守り続けている佐藤養助商店では、機械化が進む現代には珍しく、今でもすべて手作りで作業が行われている。
作業は、まず小麦粉に水を加えて3時間練ることから始まる。「練る」、「綯う」、「延ばし」、「乾燥」。この全工程の中でも「練り」が最も重要である。手で練ることによって、機械練りには不可能な空気穴をたくさん含む良質の消化のよい麺が練り上がる。そして熟成と延ばしの繰り返し。細く綯われた生地は最後には三尺六寸にまでなり、天日に干される。でき上がるまで3日間を要する。手間を惜しまず、1本1本丹念に作り上げられた稲庭干饂飩は、つるつるとなめらかで独特のコシが生まれる。
『手作りの味わい』。稲庭の里には連綿と受け継がれてきた300年の伝統の味が、今でも確かに息づいている。 |
稲庭干饂飩は、江戸時代中期に生まれたとされる。今もなお変わらぬその旨さの秘密は、300年もの間、親から子へ、子から孫へと受け継がれてきた秘法の賜物である。
本家稲庭吉佐ェ門氏は一子相伝の技が絶えることを憂い、二代目佐藤養助にその秘法を授けた。以来当家は、代は変われど連綿と本来の手作りの味を守ってきたのである。 |
|